神奈川県議会議員 鈴木ひでし 鶴見区選出 公明党

がれき処理の現状を視察

岩手県で約476万トン、宮城県で約1569万トン。これは、昨年3月11日に、東北地方太平洋沖地震による巨大津波がもたらした震災がれきの推定量だ。岩手県では一般廃棄物の年間処理量の11年分、宮城県では19年分にあたる。
(岩手県が435万トンで10年分、宮城県が1819万トンで23年分という説もある)
環境省は、宮城・岩手両県で発生した大量のがれきを日本各地で分け合って処理する、いわゆる「広域処理」を、全国の自治体に呼び掛けている。神奈川県では黒岩知事が、昨年12月の県議会本会議において受け入れを表明したものの、焼却灰の埋め立て先とした「かながわ環境整備センター」のある横須賀市芦名地区での地元説明会や、知事と県民との「対話の広場」では強硬に反対を叫ぶ人々の声が強く、知事としては“冷却期間”を置かざるを得ない状況となった。
公明党県議団は、昨年、黒岩知事に対し、がれきを受け入れるよう申し入れており、事態の打開に向けて行動することは責務と考えている。そこで、2月9日、10日の両日、先行してがれきを受け入れている東京都の処分場や岩手県宮古市における搬出作業等の調査を行った。参加者は、団長の私を含め、総勢5名の議員である。

2月9日(木)午前8時40分、県庁出発。同9時30分、東京都廃棄物埋立管理事務所(東京都江東区青海3丁目)到着。はじめに、がれき焼却灰の処分場となる中央防波堤外側埋立処分場・新海面処分場の概要をビデオで学習(資料1資料2-1資料2-2)。その後、車で現場を確認。
広大な処分場を回っていて感じたのは、人家から遠く離れたこの処分場では、今回の神奈川のような事態は起こらないだろう、ということだ。さらには、都の職員が最終処分だけでなく中間処理も経験した廃棄物処理のスペシャリストであるということ。そこは、中間処理は市町が行い、県はそれを監督する立場という神奈川とは大いに事情が違う。
その後、隣接する東京臨海リサイクルパワー株式会社を訪問し、実際に宮古市のがれき585トンを処理した焼却施設を見学した。東京電力が株式の95.5%を保有する会社で、産業廃棄物や感染性医療廃棄物の焼却を主に行っている(資料3)。また、実際の放射能の測定記録は(資料4)を参照のこと。
午後は、株式会社リサイクルピア東京エコタウン工場(大田区城南島3丁目4番3号)を訪問。この工場は日本最大級の建設系産業廃棄物中間処理施設で、宮古市の建設混合廃棄物を選別・破砕処理している。受託した建設混合廃棄物は、受付後、展開・機械選別ラインに投入され、選別された後、1階の仕分・供給エリアを経て、4階の仕上、精選別ラインに投入される。仕上、精選別ラインでは、カテゴリーを4つに分けて処理されるという。(詳細は資料4を参照)

がれきの受け入れ側を駆け足で回った後は、岩手県に向けて東京駅発4時の東北新幹線に飛び乗る。
盛岡からは高速バス。東京から約5時間かけて宮古市に到着した。宮古駅から宿泊先までタクシーで向かう途中、暗闇の中にガソリンスタンドのシルエットだけが浮かび上がっていた。設備もメーターも何もない、骸と化したスタンドを見て、被災地に足を踏み入れた実感が湧いてきた。運転手さんの「ほら、そこの歩道橋の高さまで津波が来たんだ!」という言葉に、この地を襲った津波の凄まじさを、改めて思い知らされる。


10日早朝、宮古市藤原埠頭仮置き場に向かった。昨晩とは違い、朝日の下に曝け出された惨状が、タクシーの窓越しに目に飛び込んでくる。多くが空き地になっており、運転手さんから、「ここにはラーメン屋、あそこには八百屋があったんです」などと、震災前の町の姿を聞くたびに、心が沈んだ。
藤原埠頭に到着。幾重にも積まれた廃車、屋根がない倉庫、中身がそっくりさらわれて元が何だったかもわからないような建物などを見渡して、思わず目頭が熱くなった。
現場で出迎えてくださったのは、宮古市ではなく東京都の職員の方だった。私は、がれきを出すところから、受け入れて処理するところまで一貫して自らの手で行おうとする東京都の姿勢に、「安全」に対する執念と確信を見たような気がした。
早速、東京に向けて、がれきを積んだコンテナが出る、とのことで放射能の検査状況を視察。大量のがれきをコンテナに積み込むまでの放射線測量の手順をこの目で確かめることができた。その後は、事務所2階で、岩手県の職員を交え、がれき処理のスキームを学ぶ。
最後に、宮古地区災害廃棄物破砕・選別等業務委託の現場を視察した。鹿島建設・三井住友建設・鴻池組・西武建設・三好建設・斎藤工業 特定業務共同企業体が岩手県から受託した、県内がれき処理の作業だ。一面に広がるがれきの山。なんと、その山から降ろしたがれきを一つ一つ手作業で選別しているではないか。がれきが放射能に汚染されていないという確証がなければ、到底できない仕事である。
(逆に、汚染されていたら労働安全衛生法上、大問題だ)



被災地の真実を、もっともっと政治家として多くの人々に伝える責任があるのではないか。そんな衝動を掻き立てるシーンであった。

2日間の視察を通して3つの事実がわかった。

  1. 東京都は最終処分場を人家から離れた場所に持っている。
  2. 東京都は中間処分(焼却)や最終処分場に関わる施設や人材を持っている。
  3. 現地では、手作業でがれきの分別が行われている

これらの事実は、今後、神奈川県が震災がれきを受け入れる上で、重要な視点を提供するものと思う。私たちとしても、さらなる調査・研究を進め、県民の不安を取り除けるよう努力しなければ、と決意しつつ、岩手県を後にした。