神奈川県議会議員 鈴木ひでし 鶴見区選出 公明党

質問要旨

・濁水被害の現状認識とこれまでの県の対応について

我が公明党県議団は、酒匂川の濁水被害について、今回、現地に足を運び、自分たちの目でその被害と被災後の状況を確認した。  しかし、県からは濁水被害の状況については何ら知らされておらず、視察により初めて、被害の生々しい現実や今後の生態系への深刻な影響などについて知ったところである。  神奈川の自然が危機的状況にあることを、もっと丁寧に県民の方々にも、説明すべきではないかと感じている。また、台風9号による被害が起きてから3か月近くになろうとしているが、これまでの県の対応が目に見えてこない。  そこで、県としての被害の現状認識とこれまでの対応について伺いたい。

松沢知事答弁

はじめに、台風第9号による酒匂川の濁水被害について、2点お尋ねをいただきました。
まず、県としての台風被害の現状認識とこれまでの対応についてであります。
今回の台風では、山北町を中心に本県が所管する道路、砂防施設、林道などのほか、市町所管施設も損壊するなど、各所に被害をもたらしました。また、酒匂川につきましては河川の濁りが続いたことから、様々な影響が出ていると承知しております。
最近は、酒匂川の濁りも徐々に改善しつつありますが、今年はアユ釣りの遊漁客が激減しており、来春のアユの海からの遡上にも影響が出るものと考えております。
また、河口付近の海では、細かい泥が岩場に堆積しており、産卵が始まっているアワビの稚貝の着底やカジメなどの海藻の育成が阻害され、数年後にはアワビ漁への影響が懸念されております。
さらに、県営水道等に水道用水を供給している神奈川県内広域水道企業団では、酒匂川からの取水を減量するとともに、各浄水場において凝集剤を増量するなど、濁りを除去する対策を行っていると聞いております。
そこで、これまでの対応ですが、県所管の道路、河川施設については、速やかに工事に着手し、道路は全て通行可能となるなど、応急復旧工事は完了しております。
今後、県所管、市町所管施設とも、既決予算や今回お願いしております11月補正予算などにより、概ね計画的に本復旧が図られる見通しとなっております。
また、災害直後から山北町とは連携をとり、山北町には、県職員を派遣したほか、市町の復旧工事に係る財政負担の軽減を図るための検討や国への働きかけを行っております。
漁業については、水産技術センターにおいて酒匂川の濁りによるアユや海面漁業への影響を調査するとともに、漁業者団体など酒匂川の濁りの影響を直接受ける皆様と情報交換を行い、要望をお聞きしながら、対策の検討を進めております。
一方、静岡県との連携も必要なことから、静岡県側の被害及び対応状況を確認したところ、酒匂川水系の野沢川や須川などの河川、砂防施設で約100箇所被害があり、復旧工事には最長で3年かかるとのことで、現在、河川内に溜まった土砂を取り除く応急復旧工事を実施していると承知しています。
そこで、先月、情報交換の場として「酒匂川水系連絡会」を設置するとともに、関係局長等を静岡県に派遣し、直接、復旧工事のスケジュールの共有、漁業などへの影響に配慮した工期の設定についての協力を要請いたしました。
これに対し、静岡県としてもできるだけの配慮をすると伺っております。

質問要旨

濁水被害に係る今後の県の対策について

酒匂川の濁水被害の生々しい実態と今後の深刻な影響について調査し、改めて「山・川・海」一体の連続性を確認するとともに、その対策についても部局横断的な対策が不可欠であることを確信した。
酒匂川の濁りは、災害復旧期間を考慮すると、3年程度は濁りが取れない可能性があるとも言われているが、来春以降には、鮎やアワビなどに深刻な影響が出るのではないか。
これまでは、水源環境などで山梨県とは強い関係を築いてきたが、今回の酒匂川の濁水被害の影響があって、初めて、静岡県との協力関係を認識したのではないか。「山・川・海」の連続性を真摯に検討していれば、今回の被災からではなく静岡県との協力体制が築けていたのではないかとも感じている。
そこで、今回の濁水被害については、様々な影響が懸念されるが、今後の対策について、隣接県である静岡県との連携も含め、どのように考えているのか、所見を伺いたい。

松沢知事答弁

次に、酒匂川の濁水被害に係る今後の対策についてでございます。
酒匂川の濁りは、災害発生直後は著しい状況でありましたが、その後、約3ヶ月を経過して、かなり改善してまいりました。
しかし、いまだ酒匂川の濁りは続いており、この主な原因は、神奈川県と静岡県に降った大雨により、大量の土砂が河川に流入、堆積したこと、また、現在、静岡県側で行われている河川の応急復旧工事によるものと考えられます。
静岡県も、神奈川県と同様に、台風第9号の被災県であることから、お互いに被災箇所を早期に復旧することが重要であると考えておりますが、あわせて、濁りによる被害軽減のためには、本県と静岡県との連携した取組も必要でございます。
そこで、今後の対応ですが、連絡会などの場を通じて、復旧工事に際して、できる限り濁水を流さないための協力依頼を行うとともに、工事の工程、作業内容などについて、引き続き情報交換を行ってまいります。
本県が実施する河川の護岸の復旧工事などに際しましても、水の流れを変えたうえで工事を行うなど、できるだけ濁水を流さないよう配慮してまいります。
また、漁業への対応につきましては、漁協の方々とも意見交換を行いながら、河川環境の回復状況に応じて、漁協と連携してアユの試験放流を行うなど、酒匂川にアユを取り戻す対策や、漁協が行うアユの放流義務を一部軽減することなどを検討しております。
さらに、海面漁業につきましては、定期的に潜水調査等を行って、海底の状況を明らかにし、その結果を漁業者に提供していくとともに、漁場環境の回復状況に応じ、漁協と連携し稚貝の放流を行うなど、アワビの資源回復対策を講じてまいります。
一方、今回のケースを踏まえ、今後大雨の被害により隣接県との協議、調整が必要になった場合の具体的対応方法について、「山梨・静岡・神奈川三県サミット」の場なども活用し、検討をしてまいります。
今後とも、酒匂川の濁りの状況を定期的に確認しながら、必要な対策はできる限り前倒しで実施してまいります。

要望

今回の酒匂川の濁水被害について、実は私ども公明党の県議団として、現場を丸一日朝から晩までかけて回ってまいりました。これについては、一つには、県側の対応が見えない。また、現場ではこういう様な被害がありますよという情報のもとに、しっかり現場を見てこなければならないという思いで、伺わせていただきました。今答弁をお聞きして、県土整備局、環境農政局、そしてまた企業庁、前向きに取組をしてくださっているということで安心をいたしました。
ただここで、私が申し上げたいことは、先ほどのところで申し上げましたが、まず、県民がこの状況をどれだけ知っているだろうという状況でございます。
私の地元で実はアユ漁を趣味にされてらっしゃる方も、先日この状況をお話したところ、大変にショックを受けてらっしゃいました。ここに今日の新聞があるわけでございますが、ここで「アユ釣りが深刻」ということで、記事が東京新聞で出て、それを今日私も代表質問の中でお話をさせていただきました。
知れば知るほど、ある意味で例えば私どもが水産技術センターでお聞きし、なお且つ見た写真でみるならば、これ本当に大変な事態だなということを誰だってこれは分かる。ところがそれがどのような形で県民に伝わっているのか、またこれからくるであろう、例えば小田原漁港等をひっくるめた関係者の方への配慮というようなもの又は情報というのは、今ほど必要になっているときはないのではないかと私は思っておるところでございます。

そういう意味では、政治主導という言葉はよく言われますが、私ども今回の山北町の残土の問題等についても、現場に行ってお話をした中から、色んなお話の中から出てまいりました。政治主導ある意味でもう一度また県庁一体となってこの問題に取組んでいただきたいことを、ご要望申し上げたいというふうに思います。

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